痛みと「麻酔」について

タトゥーというものは、神経が通っている皮膚に針を刺してインクを流し込む行為。

個人差はあるにせよ、痛みはつきものです。

しかも部位によっては、とっても痛い!

 

ではなぜ、部位によって痛みの感覚が違うのか、

それは感覚を受容するセンサーの分布に

"かたより"があるから、と言われます。

 

下のイラストは、

カナダの脳外科医ペンフィールド氏(Wilder Graves Penfield, 1891–1976)が

痛いと感じる「脳と感覚の対応関係」を実験し、

それを絵にしたもの。

 

この異様な人の姿は

「痛みのセンサー」が強い部位が大きくなっているのが特徴です。

∟例:手の甲、指先は痛みに敏感、一方、太ももなどは鈍感だったりする・・・


痛いなら「塗る麻酔」をしたら楽になる?

っていう質問もよく聞かれますが、

イラストを見たらわかる通り、麻酔を塗ったとて、

痛みのセンサーが強いところは、痛みは強く感じます。

 

痛みを消すために「麻酔」を使う発想って?

 

結論、日本では麻酔使用を許されるのは医業のみ。

麻酔はダメです。

彫師さん(医師免許なし)が、

どこからか麻酔を入手して施術側に塗布した場合、

医師法違反・薬機法違反にあたります。

施術側に「塗ってきてください」と勧めるのもNG!

 

医療美容の普及もあり、

皮膚に麻酔を塗ることが珍しいこと

ではなくなりましたが、

美容医療(アートメイクの定義も今はここ)は、医業の一つ。

医業とは、人間の命に関わる責任とリスクを引き受ける行為。

麻酔も、副作用や最悪の場合は命に関わる可能性もあるものです。

一方で、タトゥーは「医業」ではありません。

 

とある彫師の先生から、

「痛みをどうやって少なく色を肌に定着させるか、

それも彫師の技術。

麻酔一つでその技術向上を否定してしまっては、

これから技術の向上はない。

麻酔しているからと、刺しすぎる彫師も出てくる

と、素晴らしいお言葉も頂戴しました。

 

日本では、

多くの麻酔薬は、厳格な法管理下にあります。

簡単に流通させるとリスクがあるからです。

 

アメリカでは、

痛みを感じさせるのは「悪」という風潮から、

1990年代から医業でオピオイド(鎮痛用麻薬)を

処方する動きが一般的になり、

製薬会社もどんどん供給していきました。

 

結果どうなったか?・・・

患者はその薬に依存し、

その代替として

ヘロイン、ファンタニルという違法薬物に移行していった。

 

SNSやテレビで

路上で前かがみで動けない人の映像を、

目にした人もいるのでは?

”ゾンビ”などと比喩されたりしますが、

麻薬という強烈な物質の犠牲になった、

生身の人間。

 

今現在も中毒者(犠牲者)を増やし、

オーバードーズで年間10万人の命を奪っています。

この実例を、私たちはどう考えるべきか?


「痛み」に耐えること、

「痛み」を理解した上で針を刺すこと、

その上に成り立つ、

日本人が作り上げた刺青の精神性は、

きわめて尊いもの。

それが、江戸時代から続いている。

 

「一生修行」

とも言われる厳しい世界。

気が遠くなるほどの

技術と経験の積み重ね。

その重みに、

敬意を払わずにはいられません。


 

オーストリアのライムント・フォン・シュティルフリート男爵によって撮影された

刺青を入れた男性(江戸時代)

Date:between 1868 and 1880

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